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古いIoTシステムからのスムーズな移行:革新的アプローチ
IoTの実装が成熟し、多くの業界で標準となる中、機器メーカーは第一世代のIoTソリューションの全面的な見直しの必要性を感じ始めています。初期のIoTシステムでは、機器メーカーは現場の機器(アセット)へ繋ぐこと自体が画期的でした。しかし今日、これらのソリューションは、パフォーマンス、スケーラビリティ、コスト効率性という点で、苦戦することが多くなっています。次世代IoTの展開において、顧客は高度な分析、AIドリブンの洞察、ビジネスプロセスへのシームレスな連携を求める傾向が高まっていますが、これらが機器メーカーに対して過度なコストやリスクをもたらすべきではありません。
しかし、現実を見てみましょう:誰もがIoTシステムの移行プロジェクトという考えにウエルカムなわけではありません。システムAからシステムBへの移行は、高コストで時間がかかり、複雑さに満ちています。Sonosの最近のリーダーシップ変更が示すように、移行の失敗は、パフォーマンスの問題、収益の損失、組織全体での人員削減を引き起こす可能性があります。そして企業は、実際にビジネスに価値を追加するイノベーションにリソースを費やしたいと考えているでしょう。
このホワイトペーパーでは、機器メーカーがシステム移行を余儀なくされる理由と、彼らが遭遇する一般的な障害について検討します。コストを削減し、リスクを最小にし、よりスケーラブルで将来に対応したIoTエコシステムを構築できる代替手段を紹介します。
なぜIoTシステムを移行する必要があるのか?:第一世代IoTの一般的な課題
時間が経つにつれて、ソリューションをスケールアップさせたり新たな要求に応じて改善させたりするため、第一世代のIoTシステムでの限界が見えてくる傾向があります。スマート機器メーカーが古いIoT実装を引きずっているが故に直面する主な課題をいくつか紹介します:
需要に追いつくのに苦戦:初期のIoTサービスの成功は、しばしば新たな負担を伴います:スケーリングです。機器メーカーは機械の専門家であり、ソフトウェア専門ではありません。数千または数百万の接続デバイスを管理できる本格的なIoTサービスを維持するには、初期実装以上のIT専門知識が必要です。
コストの過負荷:生産が拡大するにつれて、費用も増加します。多くの初期IoTソリューションは、ゼロから構築されたフルスタック実装であり、機器メーカーのコアビジネスに直接関わらない機能のコストを押し上げることが多くありました。さらに、大規模なエンタープライズグレードのクラウドシステムを運用するには24時間365日体制の運用シフトが必要になり、費用をさらに増加させ、リソースに負担をかけます。
孤立したイニシアチブの絡み合い:複数の製品チームや新しい事業買収元がそれぞれ独自のIoTシステムを導入していると、プラットフォームとデータサイロの「動物園」(プラットフォームとデータがバラバラの状態)になってしまいます。機器メーカーにとって、多様なデバイス製品ライン全体でこの散在するデータを分析し、ビジネスプロセスに統合することは圧倒的優位にたてる可能性があります。
安全なエンタープライズグレード設計の欠如:セキュリティ、コンプライアンス、グローバルマルチテナンシーの要求が高まる中、多くの第一世代IoTシステムは時代遅れとなっています。これらのプラットフォームは、現代の多様な展開オプション向けに設計されていない可能性があり、サイバーセキュリティリスクを増加させ、柔軟性に不要な制限を追加していることが多いです。
統合とインテリジェンスへの高まる需要に応えられない:デバイスの接続を超えて、今日の機器メーカーは、機器のライフサイクル管理、機器全体の管理、フィールドサービスなどのビジネスプロセスへの深い統合を提供するIoTソリューションを必要としています。分析とAIはもはや「あったら良い」ものではありません—それらはよりスマートで、データドリブンの意思決定に不可欠になってきています。IoTプラットフォームは、新しいデジタルサービスを開発するためにこれらのツールと連携される必要がありますが、これらの機能を活用するには、ソフトウェアとハードウェアの両方を再考することが必要になることも多くあります。
これらのいずれかに聞き覚えはありませんか?
IoTシステム移行を困難にする要因とは?:現状チェック
変えるべき時が来たと決断したとします。しかし、実現する前に、立ちはだかる可能性のあるものについて話しましょう。大規模なIoTシステム移行を困難にする一般的な障害をいくつか紹介します。
既存システムの運用を混乱させる高いリスク
大量の現行デバイス、特に慎重に進めねばならない組み込みシステムを持つデバイスの移行は、リスクの高いビジネスです。100万台のデバイスに新しいファームウェアをプッシュして、すべてがスムーズに進むと仮定できるほど単純ではありません。小さなトラブルが一つでもあれば、機器の全デバイスが切断されたり、応答しなくなったりする可能性があり、企業と顧客の両方にとって大規模な混乱を引き起こします。
将来の機能への高い期待
第二世代のシステムでは、チームは新しいプラットフォームが最初のシステムのすべての問題に対処すると信じることが多くあります。しかし、これらの高い期待には高い要求が伴います:新しいシステムは、新しい機能を追加しながら、現在のすべての機能を提供することが期待されます。同等の機能を実現せねばならないというこの圧力により、プロジェクトは古いシステムのすべての複雑さを引き継がされる可能性があり、リリースタイムラインを遅らせ、長期的にも開発を複雑にします。
移行時の高コスト
新しいプラットフォームを導入することは、古いプラットフォームが一夜にして消えることを意味しません。移行中は、両方のシステムをサポートすることになります—それぞれに独自のコスト、リソースがかかり、そして新機能に対する継続的な顧客要求もあります。この2つシステムが存在している段階では、各々のシステムが並行アップデートを要する可能性があるため、開発労力の重複につながり、予算とリソースを薄く引き伸ばします。
開発チームの高い作業負荷
最終的な新しいIoTプラットフォームのビジョンは、競合差別化を推進すること、AIoTの可能性を開き、強力な分析を活用することです。しかし、初期段階では、あまり刺激的でない、差別化されない作業に多くの時間は費やされます:特定のニーズを満たすためにクラウドプロバイダーのPaaSスタックを構成および統合することになります。戦略上、複数のクラウドプロバイダーを含む場合、この初期段階はさらに要求が厳しくなり、実際の目標達成を遅らせる可能性があります。
最終的に、企業のコスト構造は以下の図に似たものになるでしょう。古いプラットフォームのロードマップ機能を縮小し、更新を減らすことで、古いシステム運用とサポートコストを削減し、一部の開発コストを削減できるかもしれませんが、現実は厳しいものです:総コストがほぼ倍増するか、リソース制約により新しいプラットフォームのスタートが遅れることもありえます。

図1. 従来の古いシステムからの移行のコスト構造。
システム移行ではなく、イノベーションを!:よりスマートな進むべき道
コストが高く、リスクの高い「丸ごと置き換え」方式に代わる選択肢があります:多くの欠点を最小化し、適応的で、リスクを意識したビジネス主導のアプローチです。このアプローチの肝になる部分は、以下の要素で構成されています:
- データとビジネスプロセスに焦点を当てる:新しいシステムで同じ機能をそのまま再実行するのではなく、イノベーション、差別化、ビジネスニーズに焦点を当てて、IoT実装を通してデータとプロセスを統合していくこと。
- リスクとコストを削減する:古いシステムを運用可能に保ちつつ、機能的には凍結(「明かりを点けておく」形)。特に、ケースバイケースのビジネス決定がない限り、古いデバイスを移行しないことで、古いシステムを必要な時のみ使うようにしてコストを最適化。
- Software-as-a-Service(SaaS)を最大限に活用する:新しいシステムにおいて、差別化されない機能については、即使用可能なSaaSをベースに考えること。
データとビジネスプロセスに焦点を当てる
以下の図に示すように、このアプローチの主たるアイデアは、中心のハブとなるデータレイクを通じて、古いシステム(図の下部)と次世代IoT(上部)の両方からのデータを統合することで、統一されたデータ基盤を確立することです。この中央に位置するデータレイクは、古いデバイスから新しいデバイスまで全てを含み、アセットの健全性管理や実フィールドでの管理などのバックオフィスITシステムへの統合など、高レベルのビジネスプロセスを可能にします。

図2. ビジネス主導の旧IoTシステムの統合。
データレイクとは何ですか?
データレイクは、データ統合の業界標準となったParquetやIcebergなどのオープンソース技術を活用します。これらの技術では、AWS S3やAzure Data Lake Storageなどの低コストで高性能な大容量オブジェクトストレージを使用してデータを保存、クエリすることになるので、従来の運用ストアと比較して、大規模データであっても大幅な節約とパフォーマンス向上を実現します。
例えば、Cumulocityのある顧客では、運用ストアに毎日約280GBのデバイスデータを保存しています。最適化されたデータレイクでは、この同じデータは1日あたりわずか12GBになります—23倍以上の削減です。さらに、このケースでは、データレイクストレージコストは従来の運用ストレージと比較してGB当たり約5倍低くなります。これらを掛け合わせると、最大2桁の節約が実現されます。
最大の利点は?ベースは単純に標準形式で書かれたファイルです—「強化されたXLS」とお考えください。このシンプルさにより、データ抽出、分析、統合のためのツールと製品の全エコシステムが育まれ、データから価値を引き出すことがこれまで以上に簡単になりました。
このアプローチはどのように機能しますか?
提案アプローチは、古いIoTシステムまたは次世代IoTシステム、そしてヒストリアンなどの他のソースなど、すべての運用システムからデータレイクにデータをオフロードし、データ保存することを含みます。オフロード中に、データはCumulocityデータモデルなどの統一されたデータモデルに変換でき、後の分析と処理を簡素化します。これは、既存の本格的なシステムにリスクのない簡単なプロセスです。
Cumulocity DataHubなどの強力なクエリエンジンにより、データレイクは効率的な分析を可能にし、SQLやODBCなどの標準を通じてビジネスインテリジェンス、ダッシュボード、その他の分析ツールと統合します。さらに、このアーキテクチャは、在庫管理、アセット健全性管理、予測メンテナンス、製品インテリジェンスなどのリアルタイムではないプロセス、およびCRM、ERP、フィールドフォース管理などのバックオフィスシステムへシームレスに接続できます。
リスクとコストを削減する
このアプローチの2つ目の肝となることは、古い従来システムを運用可能に保ちつつ、機能的に凍結することです(「明かりを点けておく」)。原則として、重要なバグ修正とセキュリティパッチ以外は何も変更しません。
その結果、2つの重要なことが得られます:
- システム移行関連のリスクと混乱を回避できます。現在のデバイスは既存のすべての機能を保持するので、顧客が依存している機能を失うことを心配する必要がありません。デバイス固有の(例:ファームウェア更新)およびリアルタイム機能(例:リモートトラブルシューティング)は、旧システム内で動作し続けることになりますが、APIを通じて、データレイクへデータは貯められるので、より大きなビジネスプロセスにリンクできる可能性が出てきます。
- 同時に2つのシステムを維持するのではなく、新機能の開発に向ける予定だった開発運用リソースを解放できます。このような明確な戦略により、透明度高い意思疎通も可能になり、旧システムと新システム間の利益相反を回避し、同機能を量システムで持つことを避けることができます。
長期データはデータレイクで効率的に保存され、古い従来のシステムに「明かりを点けておく」(KTLO方式)ことで安定した容量(成長とは対照的に)とデバイス向け/リアルタイムユースケースで必要とされる最小限のデータ保持期間を意識して、最適化できます。
SaaSを最大限に活用する
CumulocityなどのSaaSプラットフォームを使用することで、PaaS導入で障壁となるカスタム開発の必要性を最小化し、また特定のハイパースケーラーへの依存を減らします。このアプローチは、開発の「より多く購入し、より少なく構築する」戦略をサポートするだけでなく、運用コストも削減します。クラウドサービスプロバイダー(この場合、Cumulocity)は、ソリューションとなるSaaSコンポーネントの24時間365日サポートと高可用性インフラストラクチャを管理します。例えば、Cumulocityがデータ取り込みを継続的に監視してくれるため、企業側では何もする必要はありません。これはグローバル規模で行われており、顧客固有の潜在的な規制制約への準拠を確保できます。
Cumulocityのようなプラットフォームにより、システム移行時に購入と構築(Buy&Build)アプローチを採用できます;イノベーションと差別化のベースとして柔軟なIoTプラットフォームを購入し、すぐに使えるソリューションで戦略的ビジネス成果を迅速に達成することができます。直感的なツールにより、その上に独自のサービスを簡単に構築できます。基盤として安定していて、信頼性があり、そしてスケーラブルなIoTプラットフォームを手に入れることで、市場でイノベーションを起こし、競合差別化を図ることができます。
適応型IoTシステム移行アプローチでのビジネスケース:複雑さを伴わない価値の構築
まとめると、このアプローチはどのような利点を提供するのでしょうか?ビジネス主導のIoTシステム移行のアプローチが、コスト、リスク、複雑さを最小化しつつ、ビジネス価値を付加する方法を以下に示します:
魅力的な新しいオファリングをより簡単に作成:新しいデバイスラインや独自の差別化機能を導入する場合、このアプローチにより、企業にとって機器をアップグレードすることを奨励する魅力的な価値提案の作成が簡単になります。
すべてのデバイスの統一ビュー:データレイクアプローチにより、旧デバイスと新デバイス両方をカバーする単一の包括的なビューを作ることができ、エンタープライズシステムへの統合を簡素化します。さらに、低コストで長期間データを保存できるため、製品インテリジェンスの優れた基盤となります。
旧システムの安定性:従来の古いシステムをそのまま保つことで、システム移行関連のリスクと混乱を回避できます。現行のデバイスは既存機能のすべてを保持し、顧客が使用している機能を失うことを心配する必要がありません。
必要に応じたオプションとしてのシステム移行:最後に、システム移行がビジネス的に意味をなす場合、急ぐ圧力なしに進めることができます。システム移行は必ずしも必要ではなく戦略的選択となり、ビジネスニーズに基づいて決定できます。
従来のシステム移行と、データレイクを使い旧システムに「明かりを点けておく」(KTLO方式)を使用したCumulocityアプローチのシステム移行の概要比較を以下の図に示します。Cumulocityアプローチで主に節約できることは以下の通りです:
- 最適化された旧システム:デバイス向け/リアルタイムユースケースに必要とされる最小限のデータ保持期間で安定した容量になるよう旧システムを調整できます。
- 合理化された旧システムメンテナンス:旧システムのメンテナンスを重要なバグ修正とセキュリティパッチに制限することで、開発労力を削減するだけでなく、その展開と更新の数を減らし、運用とサポートの要求も削減できます。1
- 差別化されないタスクにSaaSを活用:差別化されない開発、運用、サポートをCumulocityなどのSaaSソリューションにシフトします。
- 無駄なシステム移行を回避:コストが高くリスクの高いシステム移行プロジェクトを、低リスクのデータレイク統合に置き換え、現行のデバイスでも高度な分析を可能にします。

図3. Cumulocity、データレイク、KTLO方式を使用したコスト構造。
この柔軟な戦略は、システムの移行リスクを低減するだけでなく、長期的な成長と将来のイノベーションをサポートできるよう、IoTエコシステムを位置づけます。
1 「システム停止理由の70%は、ライブシステムの変更によるものです。」Google Site Reliability Engineering Handbook。
実際のプラットフォーム移行:Solenis
Solenisは、水処理産業向け持続可能なソリューションの提供にフォーカスした特殊化学品のグローバルな主要メーカーです。IoT技術導入の草分け的存在として、同社は、システム運用や重要プロセスでの化学影響を含む、完全な顧客ジャーニーを理解するためにデータを活用することの価値を理解しています。しかし、初期段階では、社内の旧システムで断片化されて異なっていることがわかり、継続的にスケールするためにそして扱っているデータ量の活用を考えると、企業全体のアプローチが必要でした。
Solenisは、適切なIoTプラットフォームを選択することがシステム移行を成功させる鍵であることを理解していたため、市場の幅広いソリューションを評価するのに2年を費やしました。その徹底的な評価の後、解決策は明確でした:Cumulocityのコア機能を使ってデータ取り込み、デバイス管理・セキュリティなどの重要なタスクがSolenisの負担から取り除かれ、顧客の独自のニーズを満たすカスタムソリューションの構築に集中できるようになりました。
選択が決まると、Solenisはわずか5か月で導入を完了しました。システム移行中、Solenisは以前に構築されたもので、維持および再利用したいものを特定し続けました。Cumulocityによって可能になった購入と構築(Buy&Build)のアプローチにより、プラットフォームのすぐに使える機能を、すでに開発に時間を投資していたツールと統合して活用することが可能になりました。
ビジネス主導のIoT戦略:自信を持って前進
要約すると、このリスクを意識したビジネス主導のアプローチにより、システム移行の技術的複雑さに焦点を当てることなく、IoTソリューションを真に差別化するものに向けることができます。システムの移行リスクを削減し、リソースを解放することで、顧客とビジネスに真の価値を付加する革新的な機能の開発を優先できます。
企業のIoTジャーニーはそれぞれ独特ですが、この課題は同様です。我々Cumulocityのアプローチは、顧客プロジェクトでの実世界の経験によって形作られています — 顧客の懸念を理解し、問題を解決し、実用的なソリューションを提供することです。私たちのプロフェッショナルサービスチームは、特定のニーズに対処するシステム移行において、カスタマイズされた戦略をあなたと開発するために協力する準備ができています。IoTを活用して、投資収益率を最大化し、目標を達成しましょう!